2018年ドルトムント留学体験記
髙橋 悠
派遣先: Bayer AG
動機
私は海外で働くことに興味があり,本プログラムに参加することを決めました。実際に海外インターン生として働くことで,自分にとって良い刺激になると考えました。
内容
私の派遣先はBayer AGという製薬会社でした。場所はBergkamenにある工場に勤務しました。部署はInfrastructure & Utilitiesというところで,工場内の配管の管理,製造で用いるガス,精製水,電力,熱媒などの管理を行っています。私はこの職場において工場内のいくつかのプロセスに供給しているユーティリティの量と,その輸送に用いている配管の大きさが適したものかを調査することを主な仕事として割り当てられました。この仕事を通して,仕事を進める上での同期,そして上司と協力することの大切さを実感できました。理由は2つあり,1点目としては,同時期にBayerにインターンに来ていたドイツの学生にはとても感謝をしています。プロセスのデータを見るソフトウェアは全てドイツ語であり,初めて見たときにはかなり混乱したのを覚えています。しかし,ドイツ人の学生たちに使用法を尋ねると,彼らは快く丁寧に教えてくれました。また,自分たちの課題について互いにアドバイスを言い合い,彼らのクリエイティブな発想にとても刺激を受けました。2点目として,多忙の中でも時間を割いて,私の疑問に親身に答えてくださいました上司には大変お世話になりました。積極的にディスカッションをしていく中で,要点をまとめた報告をすることの大切さ,意見を主張することの大切さを教えてくださいました。未熟な私の意見を尊重してくださったことに,Bayer AGの風通しの良い雰囲気を感じることができました。その他にも,同じ部署で働いていた社員や現場の方々も非常にフレンドリーに接してくださり,とても居心地の良い中で働くことができました。深く感謝申し上げます。
生活
滞在先はBergkamen近郊のKamenにあるフラットでした。初めての海外での一人暮らしに,はじめのうちは戸惑うこともありました。しかし,大家さんがとても親切に接してくださり,徐々にドイツでの生活に慣れていきました。特に,私が生活に困らないように可能な限り家具を揃え,家の近所にあるお店を丁寧に案内してくださるなど,いつも気にかけてくださいましたことには非常に感謝しております。
平日は午後4時頃には仕事を切り上げ,家で夕飯の準備をしてゆっくりと過ごしていました。次の日に備えて夜はかなり早く就寝し,朝早く起きるという生活をしていました。一方で休日は,本プログラムに参加した他の学生と一緒に旅行に行ったり,個人的に近くの街に買い物に行ったりして楽しんでいました。一緒にドイツに来た他の学生と旅行して様々な場所を訪れたり,たわいない話をして笑いあったりする中で,とても楽しく2か月間を過ごすことができました。ドイツに一緒に渡った京都大学の皆さん,ありがとうございました。
最後に
ドイツでの経験は,英語をツールとして今後社会に出ていくうえで,とても貴重なものになったと思います。はじめは自身の語学力に不安を感じることもありましたが,異国の地で生活した経験は現在の自分にとって大きなステップアップにつながりました。この経験を活かして,今後の自分のキャリアにつなげていきたいと思います。 本プログラムに際して,親身に対応してくださいました先生方並びに関係者の方々には厚く御礼申し上げます。
増田 憲致
派遣先: ATEX Explosionsschutz GmbH
動機
私は将来海外で働きたいと考えていた一方で,実際に英語を運用して何かをするという経験がありませんでした。そのため,海外に留学に行くことができるというだけでなく,実際に海外の職場で時間を過ごすことができるという機会に魅力を感じ,このインターンシップに応募しました。
研修
私は,ATEX Explosionsschutz GmbHという爆発防護を専門とする会社に派遣されました。同社はヨーロッパだけでなくアメリカや日本に向けて爆発防護の設備を中心に販売を行っていますが,爆発防護においてはプロセス中の気体成分の分析も重要であり,その分野で得られた知見を用いて,食品工場で用いられる湿度測定装置なども取り扱っています。私が研修で行ったのは,湿度測定装置の基本的な性能の評価でした。かなり簡易的な試験ではありましたが,マニュアルも上司とのコミュニケーションもすべて英語だったこともあり,四苦八苦しながら何とか業務を進めました。職場の方々は皆さんとてもフレンドリーで,話したことがなくても挨拶を返してくれるなど,非常に過ごしやすい雰囲気でした。他国の会社で長期間過ごしたこの経験は,非常に貴重なものであったと感じています。
生活
研修期間中は,ATEXの敷地内にある寮に住んでいました。部屋は寝室,リビング,キッチン,バスルームと分かれており,またそれぞれが大変広く,インターネットまで完備されていて非常に快適でした。一方で,ATEX社があるのはかなりの田舎で,最寄りの駅までバスで20分ほどかかる上,帰りの終バスは21時であったため,平日の業務終了後は部屋の中で旅行の予定を立てるなどして過ごすことがほとんどでした。
週末は,ベルリンやハンブルグなどのドイツ中の都市に旅行に出かけました。ほとんど毎週出かけていたのでかなり活動的な2か月間であったと感じています。電車の乗り方やレストランでの支払いなど不慣れなことに戸惑いもしましたが,とりあえず聞いてみるという精神で何とか切り抜けることができ,最後は自信をつけることができました。
ドイツではそれぞれの都市で風景や料理などに違いがあり,非常に楽しかったです。私はビールがそこまで好きではなかったのですが,ドイツのレストランで飲むビールは非常においしく,また都市ごとに味に特徴があって旅行先での楽しみでした。また,一緒にドルトムントに行った同期にも恵まれ,毎週末の旅行は最高の思い出となっています。
最後に
本プログラムを通じ,旅行では味わうことのできない海外での生活を体験できたことは非常に有意義に感じました。日本での夏期インターンシップに参加することはできなくなってしまいますが,それを差し引いても価値のある経験ができるプログラムであると感じています。
最後に,このような貴重な機会を設けてくださった本プログラムに関わる皆様に,この場を借りて厚く御礼申し上げます。
松岡 雄也
派遣先: Kuraray Europe GmbH
動機
海外未経験の私にとってドイツでの生活は自らの将来を考えるうえで大きな糧になると考え,応募しました。大学から経済的な援助を受けられる点も魅力的でした。
研修内容
私はKuraray Europe GmbHという日本に本社をもつ企業のヨーロッパ支社に派遣され,フランクフルトのHöchstにある工場で働きました。私はOperational Business Support という部署で,プロジェクトマネージャーの上司の下で2つのプロジェクト業務に取り組みました。1つはEXCEVALという製品ラインを新設するプロジェクトです。ヨーロッパでの製品需要増加に伴い始められ,当時はその実現可能性を評価する段階にありました。私は使用候補に挙がっている反応開始剤の物性を調査し,各開始剤を使用する場合のプロセスフローに基づいたプロセス全体のコスト推算,安全性評価を行いました。そしてその評価に基づいて本製造ラインでの利用に適切な開始剤を選定,提案しました。もう1つは既存プロセスを改良するRevampプロジェクトです。製品の出荷効率を高めるため,製品をバッグに充填する装置と巨大なバッグをもち上げる装置を設置する必要がありました。まず工場に行って設置予定フロアの測量・マップの作製を行い,現在利用可能な空間を明確にしました。そしてフロア内の人やモノの流れを考慮した装置設置場所をいくつか提案しました。これらの業務以外にもプロジェクトマネジメント業務の流れについて詳細に学び,また3種類のプラントを見学する機会も頂きました。業務全体を通じて海外で仕事する上で重要なことは,わからないことはわかるまで質問し続けること,拙い英語でもいいからとにかく自分の考えを表現することであると感じました。私の上司や同僚は忙しくても必ず手を止めて私の話を聞いてくれました。
生活
私の滞在先はフランクフルトの学生寮でした。そのため,生活を送る上で困ることはほとんどありませんでした。スーパーでは野菜,果物,肉,そしてビールが安価で売られており,自炊の助けとなりました。この学生寮には私と同じようにフランクフルトでインターンに参加している学生もいて,ときどき彼らと夕食を共にするなど楽しい時間を過ごすことができました。またフランクフルトでは平日でも様々なイベントが開催されていたため,頻繁に現地の友人と街に繰り出していました。
週末には,デュッセルドルフ,ベルリン,ハンブルグなどに旅行に行きました。旅行には毎回バスを利用していました。非常に安価であるため,どこでも寝られる方には本当におすすめです。各都市の街並みはどこも優雅であり,日本の街とはまた違った良さが感じられました。ドイツのレストランやバーにはテラス席が多く印象的でしたが,たしかにお昼から外で友人たちと飲むビールはtastes greatでした。
最後に
現在参加を迷っている方がいれば,是非参加すべきとお伝えしたいです。日本にいても英語は話せるようになるし,他国について学べます。しかし,実際に目で見て体感することとは大きな差があると思います。私は2ヵ月間の生活の中で,ドイツ人,留学生,ドイツ在住日本人など様々な人に出会いました。彼らと出会い,話したことは大きく私を変えました。異なる考え・文化に触れることで初めて自国を,ひいては自分を客観視して考えることができるようになったと思います。海外経験の少ない方ほど参加をおすすめしたいです。
最後になりますが,本プログラムを支えて下さった皆様に心より感謝申し上げます。本当にありがとうございました。
養田 信
派遣先: ATEX Explosionsschutz GmbH
動機
先輩に誘われて4年生の時に交流会に参加した際,自らの英語力の無さを痛感するとともに,外国人と躊躇なく話せるメンタリティを身につける必要性を感じました。そして,このプログラムに参加した先輩方がいい経験になったと仰っていたこともあり,参加を決意しました。
研修内容
私は,ATEX Explosionsschutz GmbH (ATEX)という爆発防護の会社に派遣されました。ATEXはドルトムントから約60 km東に位置するメーネゼー(Möhnesee)という場所にあり,工場内での爆発を防ぐ機器や,爆発が発生した場合でもその被害を最小限に抑えるための機器を製造・販売しています。その中で私は噴霧乾燥機内における粉塵爆発の予防に関する業務に携わりました。噴霧乾燥とは,高温の空気とともに固液混合物を噴霧することで,液体を蒸発させ,固体を取り出す手法のことです。これは,食品や医薬品といった熱で痛みやすい材料を乾燥させるのによく用いられています。噴霧乾燥に用いられる乾燥機内では,内部に堆積したものが高温にさらされることで,発火し,粉塵爆発につながる可能性があります。粉塵爆発の前兆として,堆積物が不完全燃焼を起こし,微量の一酸化炭素(CO)が発生します。このCOを高速かつ高精度に検出することは,粉塵爆発を未然に防ぐことに貢献します。ATEXでは,測定原理の異なるCO検出器を保有しています。そこで,これら複数のCO検出器の応答速度,精度,安定性などを比較し,どの検出器を用いるべきかを検討しました。この研修を通して,それまで馴染みのなかった爆発防護に関する知識を深めることができ,視野が広がりました。
ドイツでの生活
私は,会社の敷地内にある平屋建てのドミトリーで暮らしました。会社はかなりの田舎に位置し,広大な敷地の中で心のゆとりをもって過ごすことができました。平日の仕事終わりには敷地内に併設されているジムでランニングをするなど健康的な生活をしていました。週末には,友人と一緒にケルン,ハンブルグ,ベルリン,ミュンヘンなどドイツ中を旅行したり,ドルトムントのサッカー観戦をしたりして楽しみました。旅行先では,ビールやグルメを堪能しました。特に,ビールは想像以上においしく(かつ安く),素晴らしかったです。また,ドルトムント大学の交換留学生とも飲み会やボルダリングを通じて絆を深めることもできました。
最後に
本プログラムへの参加を検討している皆さんの中には,英語力,現地での生活,就職活動など様々なことへの不安がある人もいると思います。私も,初めての海外への長期滞在であったこともあり,行くまで漠然とした不安を抱えていました。しかし,現地で様々な困難に直面しながらもそれを乗り越える度に自信がついていくものだと思います。今では参加してよかったと感じていますし,学生の間にこのような貴重な経験をいただけたことは,本当に幸運だったと思います。
最後になりましたが,松坂先生,河瀬先生,吉本秘書,Kerzel先生をはじめ,このプログラムに関わった全ての方々に感謝申し上げます。本当にありがとうございました。
脇本 拓歩
派遣先: Envimac Engineering GmbH
インターンシップに参加した動機
海外で仕事をすることに興味を持っていたので応募しました。このインターンシップは奨学金によるサポートや大学で学んだ知識を生かして仕事ができるという点が非常に魅力的でした。また,今の自分の英語力がどの程度通用するのか試したかった。
仕事について
私はEnvimacというOberhausenにあるエンジニアリング系企業に派遣されました。この会社では,蒸留塔や吸収塔の充填物やトレーの販売,排ガス浄化プラントや浄水プラントの建設などを中核事業としています。家族経営の会社であり,非常にアットホームな雰囲気でした。私は主に2つの仕事に関わりました。1つ目の仕事は,実験用蒸留装置の動作確認試験です。実験とシミュレーションを比較して,装置が正常に動作しているかを検証する仕事です。しかし,必要な部品が届かなかったので実験を行うことができず,シミュレーションのみを行いました。注文した部品が届かないという時間へのルーズさが日本とは異なり驚きました。2つ目の仕事は,ガス浄化プロセスの設計です。排ガス中の不純物を効率よく除去することができるプロセス構造と吸収液の検討を行いました。上司と何度もディスカッションを重ね,何とか仕事をこなすことができました。2つのプロジェクトに加え,オフィスに併設された工場で職人の方々に混じって装置の組み立ての手伝いや,会社の様々な施設の見学などもさせていただきました。実際に装置を見て触って作った経験は非常に有意義なものでした。写真や本の中でしか知らなかった装置に間近で触れ,プラントを作る事へのイメージを深めることができました。上司や同僚の方との英語でのディスカッションや職人の方々(英語を話せない方が多かった)とのボディランゲージを駆使したコミュニケーションを通して英語力と国際的なコミュニケーション能力を向上させることもできました。
ドイツでの生活
私は,ドルトムント工科大学の学生寮に滞在していました。学生寮はルームシェアであり,キッチンやバス,トイレは共同で個別にプライベートの部屋がありました。モロッコ,ロシア,ウクライナ出身の国際色豊かなルームメイトと二か月間過ごしました。会社と学生寮は離れていたため,通勤には電車で片道1.5時間以上かかりました。また,日本の電車ほど正確ではないため遅延には大変苦労しました(車内は日本ほど混雑していないのが幸いでした)。ただ,ドルトムント工科大学からEnvimacに来ていたカメルーン人のインターン生と一緒に通勤しており,通勤中はお互いの国の事などを話し合いました。世界から見た日本のイメージや海外の学生が何を考えて大学生活を送っているのかなど海外の生の声を知る貴重な経験をすることができました。休日は他のインターン生やドルトムント工科大学の学生と一緒に旅行をしました。ドイツの雄大な自然や歴史的建造物の数々には感動しましたし,各地のおいしい食べ物,ビールを堪能し充実した生活を送ることができました。
最後に
ドイツでの二か月間のインターンシップを通して,英語力だけでなく海外の文化,価値観,メンタリティーへの理解を深めることができました。会社の方やドルトムント工科大学の学生達,その他にも数多くの人達との出会いは一生の思い出になりました。勇気を出してこのインターンシップに参加して本当によかったと思います。最後になりますが,本プログラムの関係者の方々に深く感謝いたします。