2016年ドルトムント留学体験記

石川 徳知

派遣先: TU Dortmund

インターンシップに参加する動機

大学3回生のとき,イタリア-フランスをキャンプしながら自転車で各地を旅行しました.その際,ヨーロッパの雄大な自然,豊富な食材,古い伝統的な街並み,独創性豊かなデザインに魅了されました.このプログラム参加することで,ヨーロッパ文化を深く知ることができるとともに,自分の英語力がどれだけ通用するのか試すことができると考え参加を決意しました.

ドイツでの生活インターンシップ先(ドルトムント工科大学 Equipment Design Laboratory)

私が配属されたEquipment Design Laboratoryは,マイクロデバイスの開発や,マイクロチャンネル内での流体の対流,分散や化学反応の研究を行っている研究室でした.私は,Mr. Sebastianの下で液液抽出の実験を行い,miniaturized columnの最適な設計を行いました.研究テーマに関して素人でしたが,実験装置の説明書や研究論文を読み,分からないところは積極的にMr. Sebastianや研究室内の学生と議論しながら研究を進めました.初めの2週間は毎日夜遅くまで英語の論文と参考文献を読み,英語で実験内容を理解する必要があり大変でした.しかし,日本では決して経験することができない量の英語のシャワーを日々浴びることで確実に英語力が向上し,最終的には自信を持って英語で研究成果をプレゼンテーションすることができました.

ドイツでの生活

Photo 石川.jpg留学中はドルトムント大学から徒歩5分くらいの学生寮に住んでいました.私の学生寮はシェアルームだったので,4人でトイレ・バスルーム,キッチンを共用し,それ以外に個別にプライベートの部屋がありました.私以外に,チュニジア人とインド人の学生が住んでおり,一緒に料理を作ったり,それぞれの国の文化や政治・経済までいろんな話題について話したりしました.また,近隣には多くの他の学生寮があり,それぞれの建物で決まった曜日にBarが開かれるので,いろんな国から来た学生と話す機会があり,毎日新たな発見がありました.また,研究時間は特に決められておらず,毎日8時間を自分の好きなように時間帯を決めて働くスタイルでした.日本では,時間ではなく仕事量で何をするか決めていたので,このシステムに最初は抵抗がありましたが,慣れてくるとタイムリミットのおかげで研究にだけ集中することができるので効率が良いことが分かってきました.(もちろん遅くまで研究しないといけないときもありましたが…)私は午前8時から午後4時までを研究時間に当て残りの時間は,プライベートな用事や趣味や現地の学生と交流して過ごしました.

休日は他のインターン生とドイツの有名な観光地へ行ったり,オクトーバフェストに参加したり,サッカーの試合を観戦したりして過ごしました.また,留学中に仲良くなったドルトムント大学の学生が彼の故郷をサイクリングしながらドイツの文化や中世のヨーロッパの歴史を教えてくれたり,彼の母親がドイツの伝統料理をご馳走したりしてくれました.

最後に

このドイツインターンでの研究・日常生活を通して,英語でのコミュニケーション能力だけでなく,積極的に挑戦するタフなマインドを身につけることができました.間違いなくこれまでの人生で最も刺激的かつ有意義な時間でした.最後になりましたが,本インターンシップに関わった方々に深く感謝致します.

金子 嘉高

派遣先: ATEX Explosionsschutz GmbH

動機

私は海外の企業で働くことに興味があり、インターンシップに応募しました。欧州最大の工業国であるドイツで、化学工学を生かせるインターンシップに魅力を感じました。

研修内容

私のインターン先はATEXという爆発防護用の装置を開発・販売している企業でした。爆発防護というと日本ではあまり馴染みがないですが、欧州では爆発危険性のある雰囲気で使用される機器に対してATEXという規格があります。インターン先のCEOであるアルフォート博士はその規格の策定に携わった人物であり、防爆の分野で長年活躍されてきました。今回の研修内容は、初めの数週間で博士から爆発に関する知識を教えて頂き、その後業務に移るというものでした。当初は、爆発に関する実験を行う予定でしたが、敷地内に難民キャンプが建設された影響からそれは叶いませんでした。そのため、今回のインターンでの業務内容はCO検出器のカタログ作成及び装置の言語設定でした。CO検出器というのは、プロセスからの排気をモニタリングすることで粉塵爆発の初期に粒子表面における熱分解から生じるCOを検出し、オペレーターに知らせる等の手段を講じる機器でした。このCO検出器のカタログを作成するためには装置自体をよく理解しておく必要があり、社員の方に質問しに伺い、積極的に学びました。また、大学では数値シミュレーションを用いた高分子物理の研究を行っている私にとって、器具に触れることが新鮮であり、具体的な使用手順を考えることなど良い経験ができました。

社員の方々は友好的で、特に地元の大学からインターンに来ていた人達が親切でした。彼らは東欧や中東からの留学生で、学費が安いドイツに留学しているとのことでした。私と同じ年代でありながら、人生の目標を持ち、進路を選択してきた彼らの考え方や行動力に感心し、自分自身のこれからを考え直す良い機会となりました。

生活

Photo 金子1私は会社の敷地内に用意していただいたアパートで生活していました。平日は8時から14時まで仕事をし、同じくATEXでインターンをしていた松本君と自炊していました。会社は郊外にあり、近くの街まで交通手段がなかったため平日はあまり外出できませんでした。週末は毎週旅行をし、ドイツ国内の様々な場所をインターンに参加した6人で訪れました。旅行中は学業の話から趣味の話まで様々な話をしました。同期に恵まれ、みんなで旅行できたことが何よりも良かったです。

最後に

日本での夏のインターンを捨てることになるため、応募時は参加を非常に迷いましたが、今では参加できてよかったと思います。このインターンを経験したことで、自分が置かれた環境が恵まれていることを改めて感じました。また、日本のインターンに参加できなかった危機感から、自身の将来のためにこれから尽力しようと思います。最後になりますが、このような貴重な機会を与えてくださった今回のプログラムの関係者の方々に、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。誠にありがとうございました。

Photo 金子2

上村 修平

派遣先: Evonik Industries AG

動機

4回生の時にドルトムント報告会と懇親会に参加した際、自らの英語力の無さを痛感するとともにドイツの学生と楽しそうに話す先輩方を見て、自分もこうなりたいと考えるようになりました。また、2か月にわたる海外での生活と化学工学を用いた仕事にも興味があったので志願しました。

研修

私はEvonik という化学会社に勤務しました。同社というと香川真司選手が所属するサッカーチームのスポンサーとして有名です。私はBusiness & Development Innovation という部署で、高吸水性ポリマーの新規プロセスで用いられる反応器設計とプロセスフローの構築を行いました。高吸水性ポリマーは紙おむつ等に使われる、自らの重量の50倍もの水を吸収できるポリマーです。現行のプロセスでは、①注文の変化に柔軟に対応できないこと、②ポリマー反応は大きな発熱反応なので原料濃度を下げるために水を使いますが、乾燥過程で水を飛ばすので、その分のコストがかかること、が大きな問題でしたが、新規プロセスではその問題を解決できます。

具体的な仕事内容は、4回生のプロセス設計と同じで、反応式と反応速度式を調べ、VBAを用いて物質収支と熱収支の微分方程式を解きました。目標の反応率や反応時間を満たし、現行のプロセスより高い原料濃度を達成する反応器を考えることができました。さらにAspen Plusを用いてプロセス内の熱収支も計算しました。私のSupervisorはとても親切で、忙しいにも関わらず毎週1~2回ディスカッションの時間を設けてくださり、パイロットプラントも見学させてくださいましたし、最終週にはプロジェクトのメンバーの前で発表を行う機会も設けてくださいました。

また、私のオフィスには私以外に7人のインターン生がおり、国籍もドイツ・セルビア・イングランド・スペイン・ロシアとバラバラだったため、仕事中やお昼時には、文化の違いの話から週末の出来事まで、たくさんの事を話すことができとても充実しておりました。

生活

Photo 上村私はMarlというDortmundから電車で北西に2時間のところにある町に住んでいました。工場地域の近くなので田舎町でしたが、スーパー等はしっかりありましたので、不自由はしませんでした。会社が用意してくださったflatの住み心地も最高でした。休みの日は毎週日本からのインターン生と一緒にドイツ国内を旅行しました。4日間の有給もあったので金曜日に使わせていただき3連休の時もありました。平日は周りに日本人が一人もいない環境にいたので、みんなに会える休日は楽しみでなりませんでした。たくさんの種類のビールを飲み、お酒を介してドイツの人々とのコミュニケーションも大いに楽しみました。

さいごに

2か月間のインターンを通して、化学工学の楽しさを実感できましたし、ドイツを知ることで逆に日本の事もより深く認識することができ、自分の進路やこれからの日常の過ごし方についても改めて考える良いきっかけとなりました。最後になりましたが、本プログラムの関係者の方々に深く感謝します。今後も本プログラムが続いていくことを切に願っております。

北川 雄太

派遣先: TU Dortmund

参加のきっかけ

海外に滞在することに伴う様々な諸問題を考えるとおっくうになり、またメリットを感じにくかったこともあり、海外留学などは考えたこともありませんでしたが、今後海外で仕事をする機会が増えることが予測され、またこれまでに多くの先輩が参加し、良い経験だったと仰っていることもあり、今回はいい機会だと思って本インターンシップに参加しました。

インターンシップの内容

Photo 北川1私の配属先はドルトムント工科大学Bio chemical and Chemical Engineering専攻の、Thermodynamics研究室でした。そこでは単・多原子イオン、ポリマー、アミノ酸など種々の溶質を含む溶液を熱力学的にモデリングし、相平衡などの挙動を予測する、といった研究がなされていました。私に与えられたタスクは、溶媒である水、メタノール、エタノールの三成分について、モデルの精度を上げるために相平衡の実験データを探し、フィッティングパラメータを補正して完全にあわせること、そして実際にいくつかの溶液の液-液平衡組成をモデルを使って計算し、すでに研究室が持っている実験データとの比較を行う、というものでした。直属の上司であるドクターの学生とほぼ毎日ディスカッションをしながらタスクを進めました。我々日本人が好んで使う「みたいな感じで」や「的な」といったふわっとした表現を私の英語力では再現できず、当初は意図していないニュアンスを取られてしまったり苦労しましたが、確実に言い切れることを直接的表現で述べる、必要ならば図に書いて説明する、といったことを意識した結果、だんだんとスムーズに伝えることができるようになりました。研究室には本インターンシップで日本に来たことがある学生が三人も、そして今年参加した学生が一人いて、晩御飯やサッカーに誘ってくれたり、何かと親切にしてくれました。みんな日本のことが大好きで、楽しそうに日本での思い出話をしていたのが印象的です。

ドイツでの生

Photo 北川2私と石川君と内藤君はドルトムント大学の学生寮に住んでいました。大学、駅が徒歩圏内、寮の前にはスーパーとパン屋があるという恵まれた立地で、かなり快適に過ごすことができました。スーパーで食材、生活必需品を購入する際、ラベルがドイツ語しかなく、はじめは苦労しましたが、ドイツで生活している日本人のブログがとても参考になりました。晩御飯はほぼ自炊で、よく三人で集まって作っていました。ドルトムント中央駅が近かったので学校が終わってから買い物に出かけることもありました。すべての週末には他のインターン生と一緒に旅行に出かけました。この先スーツケースを抱えて海外を旅行することはあっても、今回のように拠点を持ちながらリュック一つでドイツ中を回る機会はめったにないと思うので、今思えばかなり贅沢な時間でした。また、一日家で寝ているだけの日が2ヶ月の間一度もなかったのが自分にとっては衝撃でした。密度の濃い時間を過ごせたと思っています。

最後に

2ヶ月は長すぎる、1ヶ月でいい、と思いながら出発しましたが、全くそんなことはなく、ドイツでの日々はあっという間に過ぎてしまいました。敢えてまったく異なる環境に身をおくことで得られたものは多かったですし、海外での長期滞在という貴重な体験を、専攻の皆様のバックアップの元で行えてとても良かったと思っています。最後に、松坂教授、Kerzel先生をはじめとしてこのような機会を与えてくださった皆様に深く感謝いたします。

内藤 壮勘

派遣先: TU Dortmund

動機

海外で2か月という長期間過ごすことができ、それに加え自分の専門分野のインターンシップに参加できることが魅力的であったからです。奨学金などのサポートもあり、大変行きやすかったです。

研修

私は、TU Dortmund(ドルトムント工科大学)のFluid Mechanics Laboratoryに派遣され、マイクロキャピラリー内の液-液2相流の可視化を目的とするParticle Image Velocimetry(PIV)に関する研究に携わりました。私が取り組んだのは、研究の初めの段階であったので、文献調査から行い、使えそうな文献値を集め、密度・粘度・屈折率など条件がマッチする-液2相流の溶液の選定を行いました。その後、それらを用い、実際に実装できるか実験的に検証していきました。

はじめは、慣れない環境であり、また上司の求めていることがうまく聞き取れず、失敗もたくさんしましたが、研究室の周りの学生や研究員の方々に補助してもらい、なんとか研究を進めることができました。そうしているうちに、だんだんと英語にも慣れ、上司とディスカッションをすることができるようになり、最終的には目標ラインまで研究を進めることができるようになりました。最終発表では、ドイツの学生からすごく良いプレゼンであったと言ってもらえて、自信になりました。

生活

Photp 内藤1ドルトムント工科大学の学生寮に2か月間滞在していました。学生寮は大学から徒歩10分ほどの位置にあり、通学は楽でした。また近くにスーパーも駅もあり、日常生活に困ることはありませんでした。私が滞在していた部屋は4人部屋で、モロッコ・スペイン・エチオピアから来た学生と過ごしていました。みんな私のつたない英語でも、真剣に耳を傾けてくれて、すぐに仲良くなることができました。放課後に、寮の学生と自炊をし、文化の違いについて真剣に語り合ったり、冗談を言い合って笑ったり、大変思い出深いです。

Photo 内藤2平日は大学に行き、夕方頃に寮に戻り、寮生と食事したり、ともにドルトムント工科大学勤務であった石川君・北川君と遊びに出かけたりして過ごしました。休日は、基本的に今回ドルトムント研修に参加した6人でドイツ国内を旅行していました。ベルリンの壁を見たり、ミュンヘンの本場のオクトーバーフェストを体感したり、香川選手の出場したサッカーの試合を観戦したり、どれをとっても大変貴重な経験でした。この二か月間で、ドイツのほとんどを観光できたのではないかと思います。ともに旅行してくれた、他の日本人のみんなには大変感謝しています。

最後に

実際に海外で目的をもって何かを成し遂げたことで、日本での生活ではない様々な障壁を超え、自分を高めることができたと思います。海外で働きたいなどの明確な意思がなかったとしても、確実に将来生かすことのできる経験ができると思います。後輩の皆様には、ぜひ参加してほしいと思います。また、こういった貴重な機会を与えてくださった、本インターンにかかわるすべての方々に心より感謝を申し上げます。今後もこのインターンシップが続くことを切に願っております。

松本 拓夢

派遣先: ATEX Explosionsschutz GmbH

動機

昨年度このプログラムに参加された先輩方にお話を伺ったり、日本に来ていたドルトムント大生との交流会に参加したりするうちに、来年は自分も参加したいと強く思うようになりました。異国での2か月にも及ぶ生活を考えると不安な部分も大きかったですが、このような機会は二度とないかもしれないと思い、応募しました。

研修内用

私はATEX Explosionsschutz GmbHという爆発防護に関する会社に派遣されました。この会社は、ドルトムント近郊のゾーストという町からおよそ10kmのところにあり、工場内での爆発を予防したり、爆発が起こった場合でもその被害を最小限にするための機器を製造・販売しています。昨年同様、ドイツの難民政策のために会社の敷地の約半分を難民の方々に開放していたため、実験等を行うことはできませんでした。私はまず、これまで馴染みのなかった爆発に関する知識を頂いた資料を基に身に付けました。続いて会社内を案内していただき、製品の製造現場を見学しました。自分の目で直接「モノづくり」の現場を見る貴重な機会となりました。その後、ATEXが製造している製品のマニュアルやシステムの日本語版を作製するために、そのシステムの英語を日本語に翻訳する仕事を任されました。この仕事を行うことで、普段の日常会話では使うことのない専門的な英単語や表現に触れることができた一方、文字からだけでは実際のイメージが湧かないものもあり、難しかったです。

この研修中私が最も苦労したのは、上司の方のアポを取ることです。私の上司はATEXのCEOであるため非常に多忙で、なかなか会っていただけませんでした。アポを取っていても急用で会っていただけなかったこともあり、アポを取るのがこんなにも難しいということを身をもって実感しました。結局、2ヶ月の研修中に数回しか会えませんでしたが、会っていただいた時には質問に丁寧に答えていただいたり、爆発に関するプレゼンをしていただいたり、有意義な時間を過ごせました。

ドイツでの生活について

Photo 松本1.jpg私は会社の敷地内にある社宅で暮らしました。会社が街から離れていたため、平日は外出することなく家の中で過ごしたり、近くの湖までサイクリングしたりしました。また隣に住んでいた金子君と週に一度街まで買い出しに行き、自炊して飲むという毎日でした。その中で、私たちは毎日異なる種類のビールを飲むことを日課としていました。

週末は、ほぼ毎週この研修に参加した6人でドイツ国内を旅行しました。ドイツの街並みはどこも素晴らしかったですが、日曜日にお店がほとんど開いていないのがとても不便でした。当初心配していたほどには電車の遅延もなく、また夜行バスの方が安くてゆったり座れたため多用していました。食事はどこに行っても似たようなものばかりで、特にジャガイモが毎日形を変えて出てきたことにはうんざりとしました。Photo 松本2.jpg私はドイツに行く前からボルシア・ドルトムントの試合を観戦したいと思っていました。というのも、私は現在ドルトムントに所属する香川選手がまだ日本でプレーしていた時によくその試合を見に行っていたからです。久しぶりに香川選手がプレーする姿を見て感無量でした。

ドイツでの生活は日本よりも不便に思うことが多かったですが、全てが新鮮でした。ドイツの人々は私たちが困っていると親切に助けてくださり、私も日々の生活の中で困っている人には積極的に声をかけるようにしようと改めて思いました。

最後に

2ヶ月間異文化の中で生活したこの経験を通して、今後どんな環境にでも飛び込んでいける自信がつきました。この経験は間違いなく自分の人生にとってプラスとなるものだと思っていますし、プラスにしなければならないと感じています本当に良かったです。

最後になりますが、私にこのような貴重な機会を与えてくださったこのプログラムに携わる全ての方々に厚く御礼申し上げます。