環境安全工学

教員

中川 浩行 ( Hiroyuki NAKAGAWA )

中川 浩行准教授(工学研究科)

研究テーマ

カーボンニュートラル社会に向けた環境負荷低減技術の開発を行っています。具体的には炭化水素資源から水素生成と炭素の固定化を行うことや独自に開発した炭素担持金属触媒を用いた水素利用技術に関する研究を行っています。また、革新的な省エネルギー手法として活性ラジカル種を用いたプロセスの開発も行っています。。

連絡先

桂キャンパス EMセンター棟 215号室
TEL: 075-383-7347
E-mail: hiroyuki@cheme.kyoto-u.ac.jp

研究紹介

地球温暖化防止の観点から,厳しい二酸化炭素の排出抑制が国際的に取り決められており,そのための技術開発が強く求められています。化石資源に関しては,高効率に利用するとともに二酸化炭素の排出を極力抑制できるプロセスの開発が必要です。廃棄物の処理に関しても広く一般的に行われている単純な焼却処分は避けなければなりません。本研究室では,低炭素社会構築のため,二酸化炭素の排出抑制と効率的な水素生成,革新的な省エネルギーの観点から実験とシミュレーションを通してプロセスの開発に取り組んでいます。

1. 熱分解を利用した炭素固定化技術の開発

炭化水素資源を高温で熱処理(熱分解)すると、水素や一酸化炭素のような低分子化合物と固体炭素が生成します。固体炭素は非常に安定な化合物で材料として利用すると炭素貯留にもなります。天然ガスの主成分であるメタンは、有効な触媒を用いると水素とカーボンナノチューブのようなナノ構造炭素に転換することができるので、最適な操作条件やプロセスの開発をしています。

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Fig.1 Carbon nano tubes (CNTs) produced from catalytic decomposition of methane.

2. 新規な炭素担持金属触媒の開発

イオン交換性の樹脂に触媒となる金属イオンをイオン交換してから炭素化することで、金属ナノ粒子が多孔質炭素中に高分散した触媒を開発しました。この触媒を用いて水素キャリアとなるギ酸の分解による水素生成や二酸化炭素の回収とメタネーションを可能とするDual-Function Materialsとしての利用を検討しています。

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Fig. 2 Carbon-supported Ni catalyst

3. Fenton反応の制御手法の開発と応用

鉄イオンと過酸化水素から酸化活性が非常に高いOHラジカルが室温で生成します(Fenton反応)。この反応をうまく制御することができれば、バイオマス廃棄物であるリグニンから付加価値の高いジカルボン酸を得ることができます。また、固体高分子型燃料電池の高分子電解質膜は、Fenton反応で化学劣化すると言われています。そのため、Fenton反応による化学劣化過程を検討し、高分子電解質膜の化学劣化シミュレーターの開発も行っています。

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Fig. 3 Fenton cycle